ASP

 ASP(Application Service Provider)とは
ASPとはアプリケーシヨンサービスプロバイダの略でユーザー用のアプリケーションのプログラムやデータをユーザーに代わってデータセンターで管理し、これをインターネットなどのネットワークを通じてユーザーに提供する事業者のことをいいます。
現在の日本でのASPという言葉の使い方からすれば事業者というより、サービス内容やソフトウェアという意味の方が強く、SaaS(Software as a Service)やクラウドコンピューティングも同じ意味で使われています。
また、日本では2008年5月より導入を検討する企業がASP・SaaSのサービスを比較、評価、選択しやすいように「ASP・SaaS安全・信頼性に係る情報開示認定制度」がスタートしました。

ASPとSaaSの違い?  ASP・SaaSのベンダー

 ASPのユーザー
大企業は自社で使用するシステムを自前で用意し、それを維持・管理するシステム要員を持つことができますが、中小企業ではそれらを購入する資金も、システム要員もなかなか準備できません。ASPはこのような企業に共同でシステム利用してもらうことにより、ユーザーにはコスト負担が小さく、事業者はコンピュータなどの設備やソフトウェアの効率的な運用によりコストを押さえ、利潤を得るというビジネスのモデルになっています。また、最近ではスケジュール管理などのクループウェアを個人向けに提供する業者もでてきました。さらに今後、ASPのサービスがよくなったり、コストダウンが進んでいくと大企業のユーザーも間違いなく増えていきます。

 ASPを導入するメリット
1.時間
基本的にはユーザーにインターネットなどに接続できるパソコンがあればASPが提供しているサービスをすぐに利用できます。もちろん、各種マスターやデータの登録は必要となりますが、コンピューターを購入しアプリケーションをインストールするという社内にコンピュータシステムを構築するより、はるかに稼働までの時間も節約できます。
2.コスト
ASPを利用するための費用としては初期導入費や月額利用料等の費用が発生します。ユーザーにインターネットなどに接続できるパソコンがあれば基本的には費用はこれだけとなります。サーバーやソフトウェアの購入費用、インストール費用、システム稼働後のシステム管理の要員やメーカー保守の費用はかかりません。
このため、自社でシステムを購入・開発するのに比べてソフトウェア・ハードウェアの購入・システム開発費用といった稼働時にかかる初期費用がかなり安くできるのが魅力です。
またソフトウェアがバージョンアップされた時もASP側の費用負担となります。ある調査機関の試算によると自社でシステムを構築するより25〜40%のコストダウンになる場合もあります。
3.運用
社内にコンピュータを管理する担当がいたとしても、中小企業の場合、少ない人数で複数のシステムを担当したり、業務を兼務していたりします。また、どんどん進歩するシステムに対して担当者のスキル(知識、技術、経験など)がついていきません。このためシステムが固まったとか、復旧したい時にバックアップをしていなかったなど運用担当者によるトラブルも少なくありません。
ASPを利用すれば使用するソフトウェアやそれが入っているサーバーなどのハードウェアの管理をしてもらえます(自社で使用するパソコンは別)。これらの機器は専用のデータセンターで管理されるため、地震などの災害にも強く、停電で止まる心配などもほとんど不要となるため、信頼性の高い、安定した運用ができます。
余談ですがASPによってはコンピュータは家賃や人件費が安く、地震の心配のない東南アジアなどの海外に置いて、日本から遠隔操作でシステム監視をする方法をとるところもあるようです。

 ASPのデメリット、注意点
1.自社の業務にあうかどうか
以前はASPの提供するソフトウェアぱ複数の企業で共同使用するため、自社用にカスタマイズすることができないことが多くありました。
最近ではユーザー側でカスタマイズできるソフトが増えてきています。しかし、カスタマイズの範囲といっても限度があるため、自社の業務内容とあうかどうか、実際に契約する前に実務担当者に、よくチェックしてもらうことも必要となります。
ただASPを利用することにより、直接費や間接費を含めるとかなりのコストダウンが見込まれるので、支障があまりなければ業務をASPのソフトウェアにあわせて変えていくという考え方も必要となります。
2.買ったほうが得な場合も
グループウェアをサービスとして提供しているASPはたくさんあります。このグループウェアの中には市販されているものもかなりあります。
グループウェアはインストールや運用が簡単(システム担当者でなくてもできる)で低価格なことで中小企業にもよく利用されているソフトウェアです。ASPから導入する場合はソフトの使用料として初期費用+1ユーザーの月間費用Xユーザー数となります。
ユーザー数や利用期間などによってはHPやDELL、NECの低コストサーバーにグループウェアを購入してインストールした方が、はるかに安あがりな場合もあります。
3.システムの移行
もし自社でパソコン用の経理システムを使用していて、これをASPに切り替え用とした時に、必ずいままで入力してきた伝票データを取り込めないのかという話がでると思います。
ASP側は以前のシステムに比べればデータのやりとりはとても柔軟になっていますが、企業側で使っているシステムや例えば銀行から提供されているファームバンキングのシステムとの間などでデータの交換がスムースにいくかどうかという問題や、独自の項目やデータフォーマットも問題になる可能性はあります。
場合によっては、そこで別途、変換費用などが発生する場合があります。もし、できない場合は新しいシステムに伝票を入力しなおす必要があります。
これは経理以外のシステムでも同じことです。ただ、これはASPに限ったことではなく、自社で新システムを購入し、システムを移行する場合にも起こることです。
4.どこを選ぶべきか
中小企業の場合、ASPの選定に際してはコストが大きな要因になると思います。ただ受注や在庫・物流、経理などを含む基幹系システムの場合はサービス品質も重要な課題となります。
サーバーを設置しているデータセンター、トラブル時の対応、データのバックップ、休日・夜間の問い合わせ対応などの確認はぜったい必要です。
ASPへの参入企業は日々増えています。以前は大手企業が中心になって事業を行うところが多かったのですが、中小のASP事業者の参入も増えてきました。中小のASP事業者には低コストを売りにしているところもあります。
確かに以前は中小のASP事業者はデータセンターがなく、災害に弱かったり、担当要員が少くなかったり、夜間の問い合わせなどの対応ができなかったりなどサービス面での問題もありましたが、最近はデータセンターの利用が進みサービス品質も向上しています。
5.ネットワーク 通信費用・スピード
ASPを利用する場合、そのセンターと自社を結ぶ回線やインターネットなどの接続料は自社負担となります。
利用する人数や利用頻度が高いシステムの場合、ネットワークのスピードの遅いと画面が切り替わるのに待ち時間が発生し、特に急いでいる時に困ってしまいます。
以前は外部のインターネット回線のスピードが問題(光ファイバーでもコストを抑えるためにファミリーやベーシックを使っていると問題)となっていましたが、現在は社内LANの環境による影響も大きくなっています。
例えばメインの回線をギガビット・イーサネットに変えても、フロア内に10Mや100M用のLANケーブルやハブが残っていたり、無線LANを使用している場合、フロアの場所によって著しくスピードが落ちている場所があったりします。
また、大容量データをやりとりするユーザーとのセグメント分けなども重要です。
6.ユーザー側のパソコン環境
ネットワーク回線が早くても、ユーザーの使用しているパソコンに業務以外のソフトがいろいろとインストールされているとパソコン自体の処理速度が低下してしまいます。
また休み時間などにネットで動画サイトやFlashを多用したサイトを見ていると、パソコンのリソースが使用され、パソコンのスピードが遅くなる場合があります。