CRM

 CRM(Customer Relationship Management)とは
CRMとは顧客の購買行動や年齢、性別、趣味などの個人の情報を収集し、その活用により、効率の良い営業活動を行うためのマーケティングの手法です。
この背景には消費者の生活様式の変化やニーズの多様化によって、企業の商品開発が難しくなっていることと、不況もあいまって新しい顧客を獲得するのに大きなコストがかかるようになったことがあげられています。そこで、「ワン・トゥ・ワンマーケティング」のように企業と顧客が1対1の関係を築き、既存の顧客の満足度を向上し、売上を伸ばす方がコストも低く、収益性も高くなるというものです。
このような考え方は、だいぶ以前からありましたが、購買動向の収集などを手作業行うことは不可能なことであり、近年のコンピュータの高速、低価格化やインターネットをはじめとしたIT技術の進歩によって可能になったといえます。

 CRMによるメリット
企業の収益を上げるためには、商品やサービスを販売しなくてはなりません。その商品やサービスを購入するのは顧客です。CRMでは従来の「開発した商品やサービスを顧客にどう売り込むか」というのではなく、「顧客の欲しい物(商品やサービス)をいかに提供するか」という顧客を中心したビジネスへの転換が必要となります。顧客を中心に据えるというCRMの考え方は企業と顧客双方にメリットをもたらすといわれています。

1.企業のメリット
1. 市場や顧客のニーズに迅速に対応できる。
2. 顧客ごとの販売戦略を計画、実施できる。
3. 新規顧客獲得のためのコストを低減できる。
4. 継続した売上げが見込める。
5. 仕入の適正化、在庫の適正化がはかれる。
6. 結果として収益が向上する。

2.顧客のメリット
1. 1人の客として扱ってもらえる満足感。
2. 自分の好みがわかっているという安心感。



 CRMのおけるシステムの活用例

業務 内容 利用システム
製品
サービスの開発
従来の購買データを集計した売上データによる製品開発ではなく、顧客の年齢、趣味、嗜好と購買データを組み合わせ、的確なニーズの把握による製品開発を実施する。 データベース
データマイニング
営業 顧客の購買時期、頻度、金額からRFM分析を実施し上客(優良な顧客)を選別する。 データベース
データマイニング
顧客の趣味、嗜好から次ぎに勧めるものは何かを分析し、電子メール(DM)や会員専用ページで提案型の営業を実施する。 データベース
マイニング
Eコマース
電子メール
顧客サポート 会員番号・電話番号やメールアドレスなどからの顧客の自動識別や過去のクレーム、サポート情報から的確で迅速なサポートの実施 データベース
CTI
経営、企画 経営企業戦略の策定、事業計画の策定 データベース
データマイニング
 CRMのシステム化のポイント
CRMはマーケティングの手法であり、コンピュータシステムではないにも関わらず、CRMシステムということで、システムを導入すれば、あたかもCRMがすぐできるように言っている企業もあります。あくまでもコンピュータシステムはCRMを実現する道具であり、使う側の人間がきちんとしたCRMの知識と実現するアイデアと実行する意志を持つ必要があります。

1.データの蓄積
顧客の年齢、性別など属性を持った顧客マスタができていることと、購買などの履歴データがあれば、システムは短い期間で稼働できます。これが無い場合、データを一定期間、蓄積した後でなければ顧客データの分析などCRMを開始することはできません。

2.全社的な取り組み
システムの稼働後、営業部署が顧客分析を行うとか、コールセンター、カスタマセンターが顧客と対応するということではCRMは実現しません。CRMでは1つの会社として全社で1人の顧客との関係を結ぶ必要があります。従来のように顧客をマスとして、どこかの部署や担当者が扱ってしまうと、顧客側は1対1の関係と見ているため、すぐに信頼関係が壊れ、顧客を失うことになります。

3.データの収集、分析、活用の繰り返し
小売業界では古くから売場の売上を上げる方法として「仮説、実施、検証」という言葉があります。これは、「こうすれば売れるという仮説を立て」「実施してみて」「売れたかどうかの検証をする」さらに、また仮説を立てる・・・というものです。CRMも同じで、まず「データを収集し」「収集したデータを分析し」「データを活用してアクションを起こす」そして、またデータを収集する・・・と繰り返すことを続けるということです。

4.柔軟かつ拡張性のあるシステム
CRMを実現するためにはシステムは大きなデータを取り扱う必要があります。システムを使用した顧客に対する素早い対応もポイントとなります。また、競合他社がCRMを導入した場合、新たな手段、方法を実現する必要があります。このため、システムは大量のデータに対応でき、いろいろなシステムと接続できる柔軟性、拡張性に優れたものが必要となります。

 CRM用のシステム
CRMのシステムは使う側の企業の業務のニーズやマーケティング、顧客サービスをどこまでレベルまで実施するかということによっても違くなるため、以前は独自にシステム開発したり、パッケージでも大きなカスタマイズが必要でした。
しかし、最近では開発側のノウハウの蓄積により、すぐれたCRMパッケージも登場してきています。またCTIやEコマースのシステムを組み合わせてパッケージと販売しているところもなどあります。またASP(SaaS)で提供されるものも多くなってきました。
中小企業にとっては導入までの時間短縮やコストや人手を考えるとASP型のCRMシステムは大きな魅力かもしれません。
もちろん、CRMを実現するためのシステムの中心となるのは「CRMデータベース」とも呼ばれる顧客情報や購買履歴が登録されているデータベースですので、現在、使用している販売管理や売上分析のデータベースに顧客マスタや購買データが蓄積されているのであれば、それを核にしてCTIやSFAシステムと連携させ、CRM用のシステムを構築することもできます。

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